弁護士費用保険

先日、弁護士会の研修に参加しました。

その中で、損保ジャパン日本興亜の保険「弁護のちから」についての

説明がありましたので、今日はこれを取り上げたいと思います。


この「弁護のちから」という保険、

「被害事故」、「借地・借家」、「遺産分割調停」、「離婚調停」、

「人格権侵害」、「労働」(「労働」はオプションだそうです。)に関するトラブルを

補償対象とし、トラブルの解決のために負担した法律相談費用(1000円は自己負担)、

弁護士委任費用(10%は自己負担)が保険金支払いの対象となるというもののようです。


交通事故の場合であれば、自動車保険の特約で弁護士費用が補償対象とされていて、

現在ではこれが利用されて、実際に弁護士費用が保険でまかなわれるということはよくあります。

(この場合、物損事故の場合でも弁護士費用が補償されますので、被害額からすると

弁護士に相談するのをためらうような場合であっても、利用されるのがいいかと思います。

実際、最近では、弁護士費用特約を利用した、物損のみの事案の相談は急増しています。)


ですが、交通事故以外のトラブルで、弁護士費用が保険の対象となることは、

まだあまり一般的ではないと思います。

「弁護のちから」では、上記のトラブルに限定されますが、一般の方が日常生活で直面し、

弁護士に依頼することが予想されるトラブルが補償されるというものです。

加入されている方は、補償の範囲のトラブルに巻き込まれた際には、

ぜひとも利用するべきですね。

私も、この保険の利用を前提にしたご相談、お受けできると思います。


この保険に加入すべきかどうかは、一概には分かりませんが、

対象とされているトラブルの内容は、実際にそのトラブルに直面しても、

費用を考えると弁護士への依頼を躊躇することも多いかと思いますので、

たとえば将来、離婚するかもしれない、遺産で揉めるかもしれない、

という心配がある方は、加入を検討してもいいのではないでしょうか。


私がとくに気になったのは、「借地・借家」事件が対象となっていることです。


これは、賃貸人から退去時に敷金を返してもらえない、修繕費を請求されたなどの

トラブルだけではなく、賃貸人から賃料の大幅な値上げを言われたというようなトラブルや、

「借地非訟事件」、すなわち、増改築をしたいが地主が承諾してくれないとか、

借地上の建物を譲渡したいがどうしたらいいか、などといった場合も、

保険の対象となり得るようです。

このようなトラブルの場合、専門の弁護士に相談した方がいいと言い切れるくらいなのですが、

依頼する側からすれば、弁護士の費用が高いと感じることも多かろうと思います

(弁護士の側からすると、割と専門的かつ労力のかかる仕事となりますので、

どうしてもそれなりの費用をいただきたいことにはなるのです。)。

それが保険でカバーされるということになれば、メリットは大きいと言えるかもしれません。


また、労働事件も対象となっていて、労働審判等も保険でカバーされるということですので、

未払賃金、残業代、解雇、懲戒、パワハラその他のハラスメント等のリスクが想定される方は、

メリットがあろうと思います。


いざ何かあったときに、費用の気兼ねなく、気軽に弁護士と相談できる選択肢を

確保しておくような感覚でしょうか。


なお、離婚と遺産分割については、補償対象のトラブルの列記では

「離婚調停」、「遺産分割調停」と書かれていて、

弁護士費用が出るのは、「調停」の時のみなのかとの疑問が生じますが、

少なくとも弁護士を対象とする研修内容からすると、調停が不成立となり、

訴訟に進んだときも、保険の対象となることが前提で説明がなされていました。

ですので、訴訟になった途端、保険金支払いを打ち切られるということはないのではないかと

思いますが、実際に加入を検討されるにあたっては、確認されるといいかと思います。