超過労働と残業代の請求

明けましておめでとうございます。


今日が仕事始めという方も多かったでしょうか。
弁護士の事務所はというと、概ね仕事始めは遅く、4日からというのは少なく、
大体5日か、あるいは6日からというところが多いのではないかと思います。
私の事務所も、例年6日が仕事始めとなっています。


ただ、弁護士自身が、6日まで休んでいるかというと、そうでもなく、
年末にやり残した仕事の片付けとか、電話があまりかかってこない今のうちに
落ち着いて調べ物をしたりとか、なんやかんやでフライングスタートを切ることが
多いです。
私自身も、締切の迫った作業があったり、出張が入ったりで、今年は今日から、
幸先の良いスタートを切らせていただいています。


さて、年末には、いわゆる大企業の超過労働が話題になりました。
一昨年に、長時間の残業や苛酷な労働環境により自死に至った女性の遺族の声が
取り上げられるなど、社会問題として取り上げられていました。
生活のために労働しているのに、長時間の労働を強いられ絶望し、自死するなど、
悲劇以外の何ものでもありません。


実際、みなさんの中にも、自死に至るか否かはともかくも、長時間の残業に従事し、
中には「サービス残業」をやらざるを得ない方は多いかもしれません。


これまで、残業が当たり前とか、残業せずに帰るのは不真面目とか、ましてや、
残業代を請求するなど、もってのほかなどとの風潮が存在することも現実ですね。
しかし、これは本当におかしなことです。


そもそも労働契約は、労働力の提供と、これに対する報酬の支払いを基本のきと
するものです。
労働力の提供については、その提供時間が、法律と契約で定められているのですから、
それを提供したなら、それ以上の労働力の提供をする義務はないのが原則です。
また、決められた労働時間を超えて労働力を提供したなら、その対価が発生するのは
当然です。
現在では、人は、自らの時間と労力を雇用者に提供して、その報酬を得て生活する
ということ自体が社会の仕組みとされているのですから、提供した労働に対して
適正な報酬が支払われないのは、搾取に他ならず、奴隷契約と一緒であり、
社会の仕組みに反することです。
労働者が、残業などをしたのに、これに対する適正な対価の支払いを求めないのは、
値段以上の売り物を持って行ってしまう客を放置しているのと同じことと思います。


近年、残業代等の請求事件が徐々にではありますが増えてきている感覚です。
これに対しては、経営者の立場から批判が上がることもあり、中には、
あらゆる手段や制度を用いてまで、対価の支払いを免れようとする動きも多いです。
しかし、繰り返しますが、決められた労働時間を超えて労働力を提供したなら、
その対価が発生するのは当然です。


ただ一方で、残業代の請求といっても、一体どのような場合に発生するのか、
どのように計算すればいいのか、支払ってもらえない場合どんな方法があるのかなど、
労働者の側が正当な対価の請求を知らないことも多いようです。
あるいは、うちの会社には「固定残業代」の制度があるとか、残業代が発生しない
「管理監督者」にされているとか、一見では残業代が請求できないかのように
されているところも多いかと思います。


今後、しばらくの間、残業代の請求とはなんぞやというテーマで、
解説を試みたいと思います。