残業代の「割増率」について

こんにちは。弁護士の今春といいます。
今日からは、残業代の計算方法の基本を、まとめたいと思います。
まず第一弾の今日は、残業代、つまり時間外割増賃金の割増率についてです。


1 就業規則、賃金規程などによる、契約上の割増賃金


残業代、つまり、所定労働時間外に働いた別料金の計算方法ですが、
まずは就業規則等で決められているなら、
それが労働基準法より労働者に有利な条件である限り、
就業規則等の規定が優先になります。
たとえば、就業規則等で、労働時間が午前9時から午後5時まで、
途中休憩1時間で1日7時間を所定労働時間とされていて、
それを超える労働をした場合は30%の割増賃金と、定められているなら、
これに基づき、1日7時間を超えた労働時間について、
30%の割増賃金を請求できます(結果として130%の賃金)。


ですから、まず第一には、職場の就業規則で、
残業代の計算方法がどう書かれているかを知っておくのは大事です。



2 労働基準法による、割増賃金(労働基準法37条1項、4項)


一方で、法律は、残業代の計算方法についても、最低基準を定めています。
以前、労働基準法が「法定労働時間」を、原則1日8時間、1週40時間まで
と定めていると書きました。
これに対応して、この法定労働時間を超えて労働した場合、
その超過時間について、25%の割増賃金を請求できます。
これを「法外残業」といいます。
この場合、通常の給料の対象である労働時間外の労働を行っており、
通常の給料ではカバーされていない労働となりますから、
通常の時間賃金の100%を、あわせて請求できます。
つまり、法外残業時間について、通常の給料とは別に、
125%の賃金を請求できることになります。


(これに対し、就業規則等で定められた所定労働時間を超えるが、
法定労働時間の1日8時間、1週40時間を超えない範囲で残業したという場合を
「法内残業」といいます。「法内残業」の場合は、
就業規則等で特別に決められていない限り、割増賃金は請求できず、
通常の時間賃金100%のみを請求できます。)


また、労働基準法は、休日を原則として週1日以上としています
(労働基準法35条。「法定休日」といいます。)。
この法定休日に労働した場合、通常の残業よりも労働者の負担が大きいといえますので、
その労働時間について、通常の残業の場合よりも高い35%の割増賃金を請求できます。
その結果、法外残業の場合と同じ考えで、休日労働時間について、
通常の給料とは別に、135%の賃金を請求できることになります。


さらに、深夜労働、すなわち、午後10時から午前5時までの間に労働した場合、
労働者の負担は増しますから、この時間分について、25%の割増賃金を請求できます。


なお、この深夜労働については、法外残業、休日労働に及んでいるときには、
重複して請求ができます。
つまり、法外残業が深夜に及ぶ場合、割増率は25%+25%で50%に、
休日労働が深夜労働に及ぶ場合、割増率は35%+25%で60%に、
それぞれなります。この結果、それぞれの時間分について、
150%あるいは160%の賃金を請求できることになるのです。
ただ、深夜労働が、所定労働時間の労働である場合は、通常の時間賃金部分は、
通常の給料として支払われていることになりますから、
25%の割増部分のみが、追加で請求できることになります。



3 まとめ


以上を、簡単にまとめれば、


法外残業(1日8時間、1週40時間を超える分)については125%以上、


法定休日労働については135%以上、


深夜労働(午後11時から午前5時まで)については、25%以上の割増、
深夜法外残業であれば150%以上、
深夜法定休日労働であれば160%以上


の賃金をそれぞれ請求できるということです。



明日以降に、続きます。